5月例会と、懇親会が開催されました。

 小雨の中、2025年5月9日(金)午後2時から、岡山県立図書館グループ研究室で5月例会を開催しました。

 2024年12月21日(土)・22日(日)に開催された「第7回日本聞き書き学校in 東京」の、大治智子氏の講演「人を動かすナラティブ(物語)の力」の振り返りでした。資料は文屋さんがまとめた大治氏の講演資料と、山川さんが用意してくれた大治氏の著書「人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか」のコピーです。聞き書きの力の一つ目が「混沌とした記憶の整理、物語化」。聞き手が客観的に聴いた話を短編なり中編の物語にして届けることで、語り手は自分自身のどうして良いかわからない不安な状況を客観視でき、解き放たれるという効果を持ちます。二つ目が「聞き手との対話が生み出す共著の物語」。語り手の主観的な話(1、2人称)を聞き手が客観的に文章(3人称)にしようとせめぎ合い、そうすることで聞き書きは潤いを持つ文体となると柳田邦男氏は指摘しています。これを「2.5人称の視点」と名づけています。聞き手が聞きたいことを聞いてまとめるインタビューとは別物であることがよくわかります。三つ目は「語り手と聞き手と読み手に起きる行動変容」。語り手は聞き書きで表出した物語を客観視することで、結構楽しかった、案外悪くない人生だったと捉え直し、立ち直ることができます。聞き手はより語り手との信頼関係が強化されること、そして生まれた物語に良い影響を受けることでしょうか。そして何より聞き書きによって第三者の読み手が生まれ、その読み手の行動変容も生む可能性を指します。四つ目は「共著の物語がもたらす無限大の効果」。これは物語は良い効果がある反面、あまり好ましくない結果へと誘う効果もあることを留意すべきという議論になりました。

 その後は、2026年1月発行予定の第14号についての編集方針の打ち合わせでした。今後も持続的に、語り手と聞き手が紡ぎ出した「共著」を記録として世に残していくために、部数や製本のプロセスを見直して経費を抑えつつ、それを実現する体制やスケジュールについて議論しました。本件は6月の例会でも引き続き議論する予定です。

 例会終了後は、メンバーの中司さんのご尽力で、韓国料理酒場「張園(ザンウォン)」にて懇親会を開催しました。チーズタクカルビに舌鼓を打ち、大変盛り上がりました。

 次回の例会は6月13日(金)午後2時から、岡山県立図書館2階グループ研究室です。聞き書きに興味がある方は是非、ご参加ください。

聞き書き人の会

岡山県岡山市を拠点に「聞き書き」手法を習得し、聞き書きによって地域の記録を残していくことを目指しています。聞き書きは、語り手と聞き手が対話を重ねて、語り手の人生や思いを「話し言葉(聞き書き言葉)で文章化」していく共同作業。この時代に生きているひとりひとりの人生を「歴史」として記録していく取り組みです。